もんだいをつくってみよう!<1手詰編>
「どうぶつしょうぎのつめしょうぎを作ってほしい」
と、ふじたまいこ先生にお願いされ、どうぶつしょうぎのつめしょうぎをつくるようになりました。 とはいっても、本将棋でも詰将棋の創作経験はゼロだった私。どうぶつしょうぎの「もんだい」をつくるのにも悪戦苦闘の連続でした。
まずはどうぶつしょうぎでできる王手をすべて数え上げ、1手で詰むもんだいからつくりはじめました。 これをもとに手数を伸ばすことに成功し、今ではTwitterのおやすみもんだいや「おとなどうぶつしょうぎ大会」の懸賞もんだいにも使っていただいています。
こうやってどうぶつしょうぎの「もんだい」をつくる過程で、ひとつの想いが芽生えました。
それは、 「みんなにもどうぶつしょうぎのもんだいをつくってもらいたい!」 です。
どうしてそう考えたのかといいますと、 (1)詰みについて理解が深まる (2)読みが深くなったり、正確になったりする (3)想像力や発想力を目いっぱい使う の3つです。
これらが、プレイヤーとしても、インストラクターとしても有用であると感じたからです。
私自身、「もんだい」をつくりはじめてから本将棋でもていねいに読みを入れるようになりましたし、こんな手もあるんじゃないかとやや奇抜な手も候補手として上がるようになりました。
例えば、子どもたちにどうぶつしょうぎの「もんだい」をつくってもらうとします。 「もんだい」をつくるには、まずは「詰み」について知るところからはじまります。 「詰み」について理解したら、駒を使って「もんだい」をつくりはじめます。 あーでもない、こーでもない、と想像力と発想力をはたらかせながら試行錯誤し、ようやく作り上げる自分の「もんだい」。 達成感もひとしおでしょう。
では、いったいどうやって「もんだい」をつくるのでしょうか? まずは、「詰み」についておさらいしておきましょう。
★★★【詰みについておさらい】★★★
あそびかたBOOKによると、詰みについて「にげるところがなくなって、つぎにどうやってもつかまえられること」と書かれています。
「もんだい」をつくるために、これをもっと細かく分けると、 「詰み」とは、 (1)王手がかかっている (2)王手をかけたどうぶつが相手に取られない (3)ライオンがどこににげてもキャッチできる です。 この3つがすべて満たされていれば「詰み」となります。
では、4つの図のうち「詰み」になっているのはどれでしょうか?
ひとつずつ見ていきましょう。 1図(左上)は、王手がかかっていますか? 2図(右上)は、王手をかけているどうぶつが取られませんか? 3図(左下)は、ライオンがどこににげてもキャッチできますか? というわけで、4図(右下)が3つをすべて満たしているので「詰み」となります。
「詰み」についておさらいしたところで、さっそくつくってみましょう。
★★★【もんだいをつくる手順】★★★
【1】ライオンの位置を決める
まずは相手のライオンの位置を決めます。 トライにならない9マスならどこでもよいでしょう。 にげるマスの少ないほうが詰ましやすいので、A1とすみっこにおいてみました。
【2】王手するどうぶつを決める
「詰み」の条件としてのひとつに「王手がかかっている」がありますので、王手するどうぶつを決めます。 今回は、ひよこで王手することにしました。
【3】どこに逃げられてもキャッチできるようにする
A1にいるライオンの逃げ道は、A2、B1、B2の3つ。 今回はきりんでA2とB1を、ぞうでB2をキャッチできるようにしてみました。 この図で詰んでいるかをチェックして、次のステップへ
【4】王手しているどうぶつをもどす
王手しているどうぶつを一手前の位置にもどします。 今回はひよこで王手しているので、A3にもどしました。 他には、持ち駒にもどすやり方もあります。
【5】余詰(よづめ)をさがす
余詰(よづめ)とは、作意とちがう詰み手順があることをいい、これがある と「もんだい」として成立しません。 【4】でつくった図の作意は、ひよこをうごかして詰ますこと。 例えば、きりんをうごかして詰んでしまったら、これが余詰にあたります。 図でA2きりんはB1ライオンと逃げられて詰みません。またB1きりんは同ライオンとつかまえられてしまい詰みません。 ほかに王手がなく、図では余詰がないので、「もんだい」として成立します。
これで1手で詰む「もんだい」ができあがりました。
今度は余詰がある例を使って、「もんだい」をつくる手順をおさらいしてみましょう。
【1】ライオンの位置を決める 【2】王手するどうぶつを決める
今回はライオンをA1に、きりんで横から王手することにしてみます。
【3】どこに逃げられてもキャッチできるようにする
A1にいるライオンの逃げ道は、A2、B1、B2の3つ。 そのうち、B1にいるきりんがB2をみはっているので、残るA2とB1をキャッチできるようにすれば良いですね。 今回はもう1枚のきりんを置いてみました。
【4】王手しているどうぶつをもどす
今回はB1のきりんを持ち駒にしてみました。
【5】余詰(よづめ)をさがす
図でできる王手は、盤の上にあるきりんを動かす2通りと、持ち駒のきりんを打つ2通りの計4通り。 そのうち、作意のB1きりん打以外に、A2きりん打でも詰んでしまいます。 つまり余詰があるので、このままでは「もんだい」として成立しません。
では、余詰を消してみましょう。 余詰を消す方法としては、 ①余詰の王手を取れるようにする ②どうぶつを置いて、打てないようにする があります。
①余詰の王手を取れるようにする
「詰み」の条件(2)にひっかけることで余詰を消す手法です。 A2に相手のどうぶつが動けるようにすれば、きりんを打たれても詰まないので「もんだい」として、成立します。 B3にそうをおいて、A2をみはることにしました
②どうぶつを置いて、打てないようにする
持ち駒は空いているマスにしか打てないことを使って余詰を消す手法です。 今回は相手のひよこを置くことで余詰を消しました。 どうぶつは自分のなかまでも良く、A2に王手にならないぞうを置いても 余詰が消えています。
余詰を消したら、作意が成立するかをもう一度チェックします。 1手で詰む「もんだい」ではそれほどありませんが、手数が伸びてくると余詰 を消したどうぶつの影響で作意も消えてしまうことがよくあります。 余詰がなくなれば、「もんだい」の完成です。
ここまで、1手で詰ます「もんだい」をつくる手順を紹介してきました。
ポイントは、3つある「詰み」の条件を理解することです。 みなさんも「もんだい」づくりにチャレンジしてみませんか?
どうぶつしょうぎの奥深さを垣間見られるかもしれません。
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